日朝協会も参加する、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会で、以下のとおり表明しました。紹介します。


慰霊の公園で死者への差別と冒涜を許してはならない

東京都に朝鮮人犠牲者追悼式典への「誓約書」要請の再考と
横網町公園の趣旨に反する集会への対処を求める

……………………………… 趣 旨 ………………………………
 東京都は、9月1日に開催される「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」に対して都立横網町公園使用のための占有許可を従来通りに出すべきであり、これを排外主義右翼団体「そよ風」が同日同時刻に主催する集会と同列に規制するべきではない。東京都はむしろ、「慰霊の公園」としての横網町公園の趣旨に鑑みて、関東大震災時の死者を冒涜し民族差別を煽動する「そよ風」の集会に対し、東京都人権尊重条例の精神に基づいて対処するべきである。

……………………………… 本 文 ………………………………
 「都立横網町公園は、慰霊の公園でもある」。
 東京都公園協会が発行する東京公園文庫『横網町公園』(09年)は、この言葉から始まっている。
 1923年9月1日の関東大震災時、3万8000人という最大の被害者を出した陸軍被服廠跡に、この公園が開設されたのは、1930年9月1日。以来、公園中央にある慰霊堂では、震災の死者を弔う法要が行政の手で開催されてきた。
 1945年以降は、空襲の犠牲者の法要も行われるようになった。慰霊堂には、関東大震災と東京空襲の死者16万3000人の遺骨が祀られている。
 公園内には、「震災遭難児童弔魂像」や「東京空襲犠牲者を追悼し平和を祈念する碑」をはじめ、東京を襲った二つの大惨事の犠牲者を追悼するモニュメントが数多くつくられてきた。
 その一つに、「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑」がある。震災から50年目の1973年、震災下で虐殺の犠牲となった朝鮮人たちを悼む目的でつくられた。建立を呼び掛けた実行委員会には、都議会全会派の幹事長が参加し、約600人が寄付を寄せた。
 翌74年からは、追悼碑の前で「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典」が毎年9月1日に挙行され、歴代の都知事がこれに追悼文を寄せてきた。
 ところが2017年以降、小池百合子都知事は追悼文の送付を取り止めた。さらには昨2019年末、同式典の実行委員会の占有許可申請に対して、東京都は公園使用に関わるいくつかの条件を提示し、これを守れない場合は式典が中止されたり「不許可」になったりしても「異存ありません」との誓約書を書くよう求めるという事態が起きている。
 こうした事態を促すきっかけは、2017年以降、追悼式典と同日同時刻に、同じ横網町公園内で、排外主義右翼団体「そよ風」が「真実の関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」を開催するようになったことである。都は「そよ風」にも「追悼式典」と同様の誓約書提出を求めており、都の担当者は東京新聞の取材に対して、両者の「トラブル」を回避するために「公平に誓約書をお願いすることにした」とコメントしている(同紙5月26日付)。
 都の要請に対して、追悼式典実行委員会は、式典は毎年、瑕疵もなく厳粛に行われてきたとして、これまでどおりに申請を受理し、占有許可を出すよう、都に求める声明を発表した(注1)。
 私たちは、今回の東京都の「誓約書」要請に対し、以下の理由において異議を申し立てるものである。すなわち、民族差別の犠牲者を追悼する式典と、民族差別を煽動する集会とを同列に扱い規制することは、「公平」でもなければ「公正」でもない。慰霊のための公園の、しかも9月1日という慰霊の日に、ほかならぬ関東大震災に関わる死者たちを冒涜し、虚偽によって貶める集会をそのまま容認することは、横網町公園の開園趣旨を真っ向から否定することにほかならない。
 「そよ風」の集会は、「真実の関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」と銘打ち、公園に隣接する石原町の震災犠牲者を悼む「大正大震火災石原町遭難者碑」の前で行われている。だが、この「慰霊祭」が、いったい誰を「慰霊」しているのかさえ、実は明確ではない。石原町の町会に何の断りもなく行われていることも分かっている(注2)。
 この集会で語られているのは、実際には「朝鮮人たちは…暴徒と化して日本人を襲い、食料を奪い、暴行を働き、あるいは人を殺し、婦女を強姦したのです」「日本人が虐殺されたのが真相です。犯人は不逞朝鮮人、朝鮮人コリアンだった」「(朝鮮人虐殺は)朝鮮人によるでっちあげです」などといった主張である。つまり、関東大震災時の流言を事実として語り、当時の朝鮮人たちを「不逞朝鮮人」と貶めることが集会の趣旨であることは疑いようがない(注3)。
 また、そこに集っているのは、各地で民族差別扇動街宣などを行っている排外主義運動の活動家たちである。ヒトラーを信奉するネオナチ団体の元指導者は、この「慰霊祭」で、「私は、いま在日朝鮮人との闘いのまっただなかにいる川崎からやって参りました」と自己紹介し、さらに「600万人のユダヤ人が虐殺された」ことを「ありもしないこと」と発言している。
 さらに彼らは、大型拡声器を集会場の外に向けて、つまり朝鮮人犠牲者追悼式典の方角に向けて設置し、「不逞朝鮮人が日本人を虐殺した」といった虚偽に基づくヘイトスピーチを大音量で流すという行動さえ行った(動画有り、注4)。
 「そよ風」は2016年から横網町公園の朝鮮人犠牲者追悼碑の撤去を求めて運動している。彼らが開催する「慰霊祭」についても、「そよ風」の顧問が「我々の当面の目標は、来年から彼我両方の慰霊祭が許可され」なくなることだと書いている(注5)。
 つまり、朝鮮人犠牲者追悼式典と共に開催不許可となって消滅することが「慰霊祭」の「目標だ」と公言しているのである。
 石原町の震災犠牲者を悼む碑の前で、朝鮮人犠牲者の追悼碑と追悼式典を消滅させることを目的として、虚偽に基づいて朝鮮人虐殺犠牲者を貶める集会を開く。これは、二重三重に、震災時の死者を冒涜する行為である。
 横網町公園は、東京という都市の「慰霊の公園」である。9月1日は、関東大震災の死者を悼む日である。この日に、この公園内で、震災時の死者を貶め民族差別を煽動する行為は、決して許されるべきではない。
 東京都人権尊重条例は、「誰もが認め合う共生社会を実現し、多様性を尊重する都市をつくりあげるとともに、様々な人権に関する不当な差別を許さないこと」を掲げている(注6)。
 東京都に求められているのは、差別の犠牲者たる朝鮮人を追悼する営みと、死者を貶め民族差別を扇動する企みを同列視して規制することではない。人権尊重条例にのっとって民族差別をやめさせ、「慰霊の空間」としての横網町公園の精神をゆるぎなく尊重するために、しかるべき判断を下し、行動することである。
 以上、声明する。
2020年6月11日

(注1) 追悼式典実行委の声明はこちら
(注2) 安田浩一「朝鮮人犠牲者追悼のウラで行われた「虐殺を否定する」慰霊祭」(19年9月21日付)。こちら
(注3) 「そよ風」ブログ記事「関東大震災石原町犠牲者真実の慰霊祭その2」(19年9月3日付)掲載の動画より文字起こし。こちら
 ※6月10日、「そよ風」ブログで同動画を非公開としたことを確認。ただし、その一部は今も見ることができる。こちら
 「そよ風」の「慰霊祭」での全発言内容を知りたい方は下記メールアドレスまでご連絡ください。データを提供します。
(注4) 毎日新聞youtubeサイト「静かな追悼の場にヘイトスピーチ」(19年9月10日、7分)。こちら
(注5) 「83歳いまだ現役!日々録」ブログ記事「再び、村田春樹氏からの急告!」(18年8月31日付)。こちら
(注6) 正式名称は「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」(19年4月施行)。こちら

声明についての連絡先 加藤直樹

賛同人
 愛須勝也(弁護士)
 赤石あゆ子(弁護士)
 明戸隆浩(社会学者)
 飯島滋明(名古屋学院大学教授、憲法学・平和学)
 飯塚拓也 (日本キリスト教協議会/東アジアの和解と平和委員会委員長)
 池田香代子(翻訳家)
 池田賢太(弁護士)
 板垣竜太(同志社大学教員)
 伊地知紀子(大阪市立大学文学研究科教授)
 伊藤朝日太郎(弁護士)
 稲垣克彦(旭川医科大学准教授、物理学)
 稲葉奈々子(上智大学)
 指宿昭一(弁護士)
 上杉聰(大阪市立大学元教授)
 鵜飼哲(一橋大学名誉教授、フランス文学・思想)
 内田樹(神戸女学院大学名誉教授)




【声明】 東京都は、当実行委に対する前記誓約書要請を撤回し昨年までと同様の占有許可を速やかに行うことを、強く求めるものである


2020年5月18日

9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会
実行委員長 宮川泰彦

 9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会(以下、当実行委)は、東京都立横網町公園内に建立されている朝鮮人犠牲者追悼碑前で、毎年9月1日、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典を執り行っている。
 横網町公園は、1930年に関東大震災の犠牲者を追悼することを目的として開園した「慰霊の公園」(注1)である。朝鮮人犠牲者追悼碑も、こうした公園の趣旨に合致するものとして、関東大震災50年を迎えた1973年(昭和48年)に当時の都議会全会派の幹事長も参加する建立実行委員会によって建立され、都に寄贈されたものである。
 当実行委は、碑が建立された1973年以降、毎年、都との事前打ち合わせを踏まえ使用許可を得て、厳粛且つ平穏に追悼式典を執り行ってきた。式典には、小池都知事が取り止めるまでは歴代の都知事から追悼文が送付され、近年では総理大臣経験者やソウル市長、宗教者や学者などからもメッセージが寄せられるようになった。また昨年(2019年)は700人が参列するなど、虐殺犠牲者を悼み、二度と繰り返すまいと誓う場として、広く認められるようになっている。
 そして、この追悼式典が、公園管理に関わる大きな問題を指摘されるようなことは、これまでなかった。
 ところが昨年9月以降、東京都は、2020年の追悼式典使用許可申請に対して、使用許可条件について整備中だとして、当実行委の申請受理を3回にわたり拒否し、12月24日には、「横網町公園において9月1日に集会を開催する場合の占有許可条件について」(以下、「条件」)と題する文書を当実行委に示してきた。
 それによると、毎年9月1日の横網町公園では、「関東大震災に関連した追悼行事等の集会に関する占有許可申請が複数」あり、昨年は「集会参加者によるトラブルが発生」したため、公園利用者の安全のために条件を付すこととしたという。「複数」とあるように、「条件」は、9月1日に横網町公園で式典や集会を行うすべての団体に向けられたものである(詳しくは後述)。
「条件」の具体的な内容は、「公園管理上支障となる行為は行わない」「(都の大法要と重なる時間は)拡声音量装置は使用しない」「(集会で使う拡声器は)当該参加者に聞こえるための必要最小限の音量とすること」などである。
 問題なのは、東京都が、これを遵守する旨の都知事宛ての誓約書を提出することを求めていることである。しかも、この誓約書には「下記事項が遵守されないことにより公園管理者が集会の中止等、公園管理上の必要な措置を指示した場合は、その指示に従います。また、公園管理者の指示に従わなかったことにより、次年度以降、公園地の占用が許可されない場合があることに異存ありません」とある。
 こうした内容の誓約を求めることは、本来自由・自主である集会運営を萎縮させる恐れがある。そもそも一般通念上、誓約書を書かせるというのは非常に重い要求である。まして、式典を中止させられたり不許可にされたりしても「異存ありません」との誓約を求めるのは、よほどのことである。ところが当実行委は、都が示したような「公園管理上支障となる行為」等を行ったことはないのである。
 当実行委は、今年2月、「条件」が示す一つ一つの内容について、朝鮮人犠牲者追悼式典がそれに反する行いをしたことはあるかと文書で質した。すると、都は、そのすべてについて「今回設けた条件に概ね合致している」として、「今後も、概ね昨年同様の式典を開催いただけると考えております」と、文書で回答した。追悼式典のあり方には従来のままで基本的に問題がないというのである。だとすればなおさら、当実行委に誓約書の提出を求める必要性も合理的理由も見当たらない。なぜ当実行委が、このような誓約を、都知事に対して行わなければならないのか。
 都の要請の背景には、2017年より、朝鮮人犠牲者追悼式典と「同日同時刻」にあえてぶつけるかたちで、同じ横網町公園内で行われている、右翼団体「そよ風」主催の「真実の関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」と称する集会がある。毎日新聞動画ニュースサイトが「追悼の場に『ヘイトスピーチ』 9月1日、朝鮮人犠牲者追悼式典」(注2)と伝えたように、この集会では、「不逞朝鮮人」が「震災に乗じて略奪、暴行、強姦」を行い、「日本人が虐殺されたのが真相」だなどと演説し、さらに拡声器を故意に朝鮮人犠牲者追悼式典の方向に向け、それを大音量で流すといった、まさに「トラブル」を引き起こしている。
 東京都が示した「条件」の内容は、東京都自らが文書で回答したとおり、追悼式典については全く問題にならないものだが、一方、「そよ風」の行動についてはその多くが当てはまる。この「条件」は、「そよ風」主催の集会を念頭に置いたものだと理解できなくもない。
 しかし、だとすればなぜ「そよ風」に対して個別に問題行動について注意するのではなく、何の瑕疵もない当実行委とセットにして、双方に誓約書を書くことを求めるのか。
 なぜ、震災時の虐殺犠牲者を「不逞朝鮮人」と貶めることを目的として現にトラブルを惹起している集会と、震災時の朝鮮人虐殺犠牲者を厳粛に追悼してきた式典を同列に扱い、集会を中止させられたり不許可にされたりしても「異存ありません」などと誓わせるのか。「慰霊の公園」という横網町公園の趣旨に照らして、都の意図に対する疑念は膨らむばかりである。
 当実行委は、今後も毎年、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典を厳粛に執り行っていく。東京都に対しては、2020年9月1日関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典開催に関する当実行委の占有許可申請を直ちに受理すること、および、当実行委に対する前記誓約書要請を撤回し昨年までと同様の占有許可を速やかに行うことを、強く求めるものである。
以上
(注1)『横網町公園』(東京都建設局公園緑地部監修・東京公園文庫、2009年刊)「はじめに」より。
(注2)「追悼の場に『ヘイトスピーチ』 9月1日、朝鮮人犠牲者追悼式典」。19年9月10日公開で、現在も閲覧可能。こちら