日朝協会第47回定期全国総会 決定


日朝協会第47回 定期全国総会の決定は以下の通りです。




以下の議案、議案の補足、討論のまとめ、総会宣言はそれぞれ、7月24日の定期全国総会で採択されました。

第47回全国定期総会議案 (5月の全国理事会で決定)

はじめに
 2019年12月以降、世界的なパンデミックとして人類に襲いかかっている新型コロナウィルス感染症の拡大は衰えていない。人と人との接触を避けることを求められる感染症対策は、人と人とがつながることを求める国際友好運動の前提を崩す。2020年3月以降は日本人の朝鮮半島への渡航は極めて制限的なものとなり、国内でも1回目の緊急事態宣言が発せられた4月以降には人と人が接触すること自体が極めて抑制的にならざるを得なくなり、各種集会や行事、会議や作業などの協会の諸活動は全国的に停滞や休止を余儀なくされた。
 それでも、さまざまな工夫を重ねて組織活動を維持、発展させる努力が各地で実践されてきたことは重要である。今次総会では、そうした経験を交流し、組織を拡大して日本と朝鮮半島の友好運動を前進させるために議論を尽くそう。

第1章 激動する内外情勢
(1)元徴用工・「慰安婦」問題をめぐり「史上最悪」の日韓関係
 2019年7月に始まった対韓輸出規制以降、「史上最悪」と評される日韓関係に改善の兆しは見られない。
 韓国大法院が日本企業に対して元徴用工への賠償を命じた判決から2年が経った2020年10月、菅政権発足後はじめて日韓局長級協議が行われた。日本側は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」であり、判決は国家間の約束に反するとしたのに対し、韓国側は植民地支配という反人道的な不法行為による被害者個人の人権の回復については解決していないとする司法判断を尊重し、政府と被告企業に対応を求めた。両者の主張はこれまでと同様に平行線のままであった。
 2021年1月8日にはソウル中央地裁が日本政府に対し、元日本軍「慰安婦」への賠償金の支払いを命ずる判決をくだした。日本政府は、国が他国の裁判権には服さないとする「主権免除」の国際慣習法上のルールにより、裁判自体が成立していないとした。しかし、重大な人権侵害の場合は、「主権免除」を例外的に否定して個人の人権救済にあたるべきだとする国際的な潮流があり、この判決はその流れに沿うものだった。一方で4月21日には同じ裁判所で「主権免除」を適用する真逆の判決をくだした。この判決に対して、支援団体は被害者の人権よりも国益を優先させたとして強く反発している。
 文在寅大統領は2021年の年頭記者会見で「(1月8日の「慰安婦」判決には)正直困惑した」「(2015年の「慰安婦」合意は)日韓両政府の正式な合意だったと認める」などと述べた。この発言を受けて、2019年に「声明 韓国は『敵』なのか」を出した日本側の人々が「慰安婦問題の解決に向けて?私たちはこう考える」という共同論文を発表した。この中で「お詫びと反省の気持ちを表明した」安倍首相(当時)の言葉を元「慰安婦」被害者に届けることなどを提案している。日韓関係解決への糸口として貴重な提言といえるだろう。

(2)朝米・南北首脳会談を経て
 2018年6月のシンガポールに始まった朝米首脳会談は、成果が見えなかった19年2月のハノイに続き、19年6月に板門店で3度目の対談が行われた。米大統領の交代もあり、その後の進展は見られないが、「朝鮮戦争の終結」が世界的な注目を浴び、実現への努力が模索されていることは特筆に値する。
 文在寅大統領はバイデン米政権の発足は「朝米対話、南北対話を新たに開始する転機になる」と述べ、また板門店宣言から3周年の2021年4月27日にも南北対話の再開をめざす意向を示した。しかし、3月の米韓合同軍事演習に対し、朝鮮の金与正党副部長は「わが朝鮮を狙った侵略的な戦争演習」と強く非難し、「北南軍事分野の合意書」も破棄する可能性があることにも言及した。4月には朝鮮がコロナ感染を理由に東京五輪への不参加を表明し、南北対話の契機と考えていた韓国側には痛手となった。南北対話は容易ではない状況が続いている。

(3)日朝国交正常化
 2021年1月の施政方針演説で菅首相は「金正恩委員長と条件を付けずに直接向き合う決意に変わりはなく、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化をめざします。」と述べたが、具体的な動きは見えてこない。
 そもそも日本政府は朝鮮学校や朝鮮幼稚園を敵視し、無償化や補助金支給の対象から除外するという差別的姿勢を一貫して取っており、朝鮮に対して国連決議を超えた独自の経済制裁も続けている。こうした問題をそのままにして、「条件を付けずに直接向き合う」と言っても相手が話し合いのテーブルに着こうとしないのは当然である。

(4)安倍−菅政権の暴政
 2020年8月28日、在位7年8ヵ月で安倍首相はついに退陣した。表向きは首相の健康問題が理由だが、戦争法の強行、9条改憲策動、政治の私物化、消費税増税、外交の失敗、コロナ対応の失政などあらゆる面で行き詰まり、国民の怒りと運動によって退陣に追い込まれたというのが実態だった。
 後を継いだ菅政権のコロナ対応も、大規模検査は実施せず、ワクチン接種率は先進国で最下位、営業補償のための様々な支援は打ち切るといった愚策の一方で、東京五輪開催にはしがみ付いており、国民の命と暮らしを守るという姿勢はまったく見られない。こうした中で女性や子どもをはじめとする社会的弱者を追い詰める新自由主義の社会構造の歪みが露わになっている。さらに、日本学術会議会員の任命拒否に見られるように民主主義と法治主義を破壊し、学問の自由を蹂躙する強権政治を行っている。
 2021年4月25日に投開票された衆院北海道2区、参院広島と長野の3国政選挙は安倍政権下の金権政治や菅政権のコロナ対策が問われたが、すべて野党統一候補が勝利した。秋にも予想される総選挙で、市民と野党の共闘の力で政権交代をめざす運動が確実に前進していることを示したといえる。

(5)核兵器禁止条約の発効と東アジア
 2021年1月22日、核兵器の開発、製造あるいは取得、使用あるいは使用すると威嚇することを禁じた国際規範として核兵器禁止条約が発効した。核兵器は国際法によって禁止された違法な兵器となったのである。
 日本政府は、唯一の戦争被爆国であるにもかかわらず核兵器禁止条約への署名・批准に背をむけている。中国、朝鮮、ロシアと核兵器保有国がひしめく北東アジアを非核・平和の地域にするために日本の果たす役割はきわめて大きい。日本政府が核兵器禁止条約に参加し、アメリカの「核の傘」から脱して、関係国に核兵器の禁止を呼びかければ、朝鮮半島の非核化を大きく後押しすることになるだろう。そのためには、日本政府に条約への参加をせまるだけでなく、条約に参加する野党連合政権を樹立することも重要な課題になっている。

(6)憲法9条を守る運動
 安倍前首相は在任中一貫して9条改憲に執念を燃やしていたが、実現できなかったことを「断腸の思い」とその無念を語り退陣した。その後を継いだ菅首相も改憲をあきらめてはいないばかりか、コロナ禍のどさくさに紛れて改憲論議がじわじわと進行している。自民党、公明党、維新の会はコロナ危機に便乗して緊急事態条項の創設など憲法上の課題について主張し、2021年5月に衆議院憲法審査会と本会議で国民投票法改正案を可決し、通常国会で成立させようとしている。
 2012年度以降の8年間で「防衛予算」は12.7%増加し、20年度は5兆3,100億円にまで達している。「敵基地攻撃能力」を持つことを先取りしたような兵器も予算化され、憲法に反して軍事大国、「戦争する国」づくりが実態として進行していることも見逃してはならない。さらに、2021年4月17日の日米首脳会談では、中国の覇権主義に対抗するため日米軍事同盟を全面的に強化する方向が示され、今後一層の日本の軍事力強化と軍拡が進められる危険がある。

第2章 第46回全国総会(19年6月)以降の活動経過と教訓
(1)組織強化・会員拡大への取り組み
 2020年5〜6月の開催を目指していたブロック別交流集会は、(1)北海道・東北、(2)関東・信越、(3)東京・神奈川・千葉・静岡、(4)近畿・北陸・愛知、(5)中国・四国・九州に分けて本部担当役員を配置するなど準備を進めていたが、コロナ禍の第1波で中止を余儀なくされた。
 協会規約により全国総会と次回の全国総会との間の2年間に4回以上の開催を規定されている全国理事会は19年10月、20年10月、21年1月(オンライン開催)、21年5月に開催された。コロナ禍で20年4月は延期となったが、広めの会場を利用し、換気や手指消毒を徹底するなどの対策を取りながら、全国各地の経験交流と活動方針についての諸決定を行い、機関紙などを通じて全国に発信してきた。オンライン開催により、北海道など遠隔地からの参加が可能となったことは画期的な成果といえよう。
 なお、2020年10月17日には全国理事会において、「日本学術会議新会員の任命拒否に抗議し、105名全員の任命を求めます」と決議した。
 前大会からの2年間に千葉東葛、山梨の2支部が活動を停止する一方、三重県名張に新支部が結成された。活動停止は役員の高齢化など活動の困難さに起因するとされる。また、会員数でも2桁の減少があり、準会員と合わせ3桁の減少となっていることは極めて憂慮される。ただし、新結成の三重県名張支部と高知ではわずかながら会員数を増やしており、各地方組織の奮闘が期待される。

(2)本部機能の強化と機関紙活動の充実・発展
 本部執行役員会は2020年4月を中止し、5月をリモート開催した以外には、コロナ禍でも感染対策を施し、本部での毎月開催を維持し続け、当面の課題について適切な討議が行われた。オンライン参加にも対応したため、感染症の怖れや病気療養などのために本部に来られない役員も参加できたことは意義深い。
 2020年6月に俵事務局長が病に倒れたことで、本部事務局機能が弱体化し、全国の運動にも少なくない困難をもたらした。
 一方で本部事務所にPCカメラ兼マイクを設置し、Zoomに有料登録するなどしてリモート対応し、執行役員会や全国理事会で活用されたことは本部機能の強化に寄与した。
 国際活動では、韓国進歩連帯との交流が協会役員の訪韓や進歩連帯役員の訪日の機会を捉えて少しずつ前進しているが、コロナ禍で中断を余儀なくされている。本部企画の「光州5・18の旅」も少なくない参加希望者があったにも関わらず、中止の止むなきに至った。
 機関紙「日本と朝鮮」はコロナ禍でも欠かさずに編集・発行を続け、全国の運動を励ましてきた。「コラム・ポラリス」の執筆者を固定したり、新たに「朝鮮半島の世界遺産」を連載するなど紙面の充実に努めている。

(3)植民地支配責任の歴史認識を広める活動
 元徴用工、日本軍「慰安婦」問題に関わって、「完全かつ最終的に解決済み」と喧伝する日本政府により、韓国への異常な反発と攻撃が続き、日本のほとんどのメディアが無批判に報道している。その結果、国民のかなりの部分に「韓国はおかしい」「けしからん」など「嫌韓・反韓」が広がっている。
 そうした情勢に応えて、協会本部では徴用工問題についての10円リーフレット『このままでいいのか日韓関係』を、2019年10月に憲法会議と共同で4万部発行し、1万部の普及・活用を目標に取り組んできた。現在までに17,000部以上を普及し、世論に一定の影響を与えた。中でも、東京の葛飾支部が駅前でリーフを配布しながらの宣伝行動を2回取り組んだ経験は特筆に値する。
 協会本部では安倍政権の報復的輸出規制に対して、2019年8月6日に「安倍政権は韓国への輸出規制を撤回し、徴用工問題を話し合いで解決せよ」との声明を発するとともに、機関紙上などでも歴史歪曲を許さない取り組みを継続している。2020年7月14日には日朝協会をはじめ64の日韓の市民団体が「産業遺産情報センターでの強制労働否定の展示に抗議し、強制労働被害の実態やその証言の展示を求める」共同声明を発出し、「日本政府は世界遺産登録での国際的な約束(朝鮮人強制労働の犠牲者を記憶するための措置を取るとした)を守るべき」と指摘した。高知では2019年9月、本部の俵事務局長を講師に、「日韓問題緊急フォーラム」を開催した。

(4)アンチ・ヘイトと関東大震災朝鮮人犠牲者追悼の取り組み
 関東大震災時の朝鮮人虐殺犠牲者追悼行事は、東京、埼玉、神奈川、群馬などで、協会が主要な役割を担って取り組まれ、東京では2020年のコロナ禍に初のインターネット中継を成功させる成果を上げた。東京では都側の「誓約書」強要を跳ね返す運動が、著名な知識人を含む広範な市民の共感を得て、事実上の撤回に追い込んだ。この問題は群馬の「追悼の碑」撤去策動などヘイト集団・歴史修正主義集団の戦略・戦術に行政が手を貸すという点で共通している。東京、埼玉ではマスメディアの注目もあびて多くの取材依頼があり、朝日新聞の社説に掲載されたほか、NHKのニュース枠でのミニ特集や大手新聞社各社での報道が相次いだ。
 「高校無償化」から朝鮮学校排除に反対する連絡会に参加し、東京の大田支部など各地で在日コリアンと手を携えて活動してきた。「幼保無償化」からの朝鮮幼稚園排除に反対する運動についても同様であった。
 さらに、川崎市議会が全国初となる「罰則付き」のヘイトスピーチ禁止条例を可決・成立させたが、日本人と在日外国人が交流する施設に対して殺人予告の年賀状や爆破予告が届くなどの危険な動きもあり、川崎の協会組織を含む市民の抗議活動が継続されている。2020年10月には川崎で「川崎ふれあい館・講演と見学のつどい」を開催し、在日コリアンの歴史と生活に心を寄せた。
 また、2020年3月、さいたま市は幼保育園に対して新型コロナ対策用にマスクを配布したが、朝鮮学校を配布対象から除外した。このあからさまな差別待遇に対して、埼玉県連をはじめ内外の市民組織や個人からの抗議が殺到し、さいたま市は朝鮮学校にもマスクを配布すること決めた。

(5)日朝国交正常化、朝鮮半島の非核化への取り組み
 2018年11月以降、継続的に取り組まれている「日朝国交正常化署名」は団体、個人ともに目標とする署名数に達しておらず、政府への要請にまで至っていない。本部では署名活動の実践過程でのさまざまな疑問に答える「Q&A」を機関紙「日本と朝鮮」に掲載し、全国の活動を励ましてきた結果、東京や埼玉、群馬、石川、京都などで顕著な成果が見られる一方、まだまだ全組織を挙げた取り組みとなっていない。
 東京都小平支部では2019年10月に「朝鮮みたまま」学習会を開催し、日本政府による制裁解除を先行し、国交正常化へ向かう意思を固めあった。
 2021年2月9日には「核兵器禁止条約の発効を心から歓迎する」執行役員会決議を発し、朝鮮半島の非核化と日本の条約参加を強く訴えた。

第3章 今後2年間の重点課題
(1)新支部結成と会員拡大、女性会員・役員の意識的増員
 各地方組織は多様なテーマの学習会や韓国映画上映会などの文化的な催しを実施し、会員を増やす努力を継続してきたが、コロナ禍で活動が制限されるなどの要因で、目に見える会員増の成果は上がっていない。何も手を打たなければ構成員の自然減は回避できない問題であり、会員増がなければ組織の減退を免れないことを自覚的に捉え、目標数を定めるなどの措置を伴った会員の増加を追求しなくてはならない。
 そのため、大阪で実践されている「連続コリア講座」など、従来の「例会方式」で定期的、継続的な集会や行事に取り組むことが重要である。その際、映画・ドラマ、伝統芸能、文学、K-POP、スポーツ、食文化など多彩なテーマのプログラムに挑戦することも重視すべきである。東京や埼玉などにならい、朝鮮語学習・ハングル講座にも取り組もう。また、本部作成の「入会案内パンフ(ひな形)」などの「声かけツール」を使った拡大作戦を準備するなどして、いつまでに、何をするかという計画的な会員拡大の働きかけが、全地方組織で必要となっている。
 一般に女性が多い組織ほど活動が活発な傾向は顕著に現われており、ホームページやブログ、フェイスブックなどのSNSの活用を強化するなどして、女性と若い世代の会員拡大に向けて取り組む。また、役員体制の増強や若返りについて意識的に取り組み、女性役員を増やすことは時代の要請であり、組織の発展に不可欠の要素である。
 さらに、協会組織のない地域での支部結成のために、本部役員の奮闘が要請されている。

(2)ウィズ・コロナの世界での新しい活動スタイルの確立
 新型コロナウィルスの特性からして、人と人が接触・接近することにリスクを抱えるため、従来型の集会・イベントの開催方法に再考が迫られている。会場は「密」を避け、換気効率を高め、消毒を欠かさないこと、参加者はマスク着用、手指消毒を徹底するなどの対策により、感染のリスクはかなり低減できる。「感染症だからやめる」のではなく、「感染対策して実施する」よう心がけよう。
 Zoomやgoogle meetingの活用で、オンラインでの意思疎通が可能となり、従来は参加できなかった遠方からの参加が実現し、家事や介護などの時間制限がある人にも参加しやすくなった。「全員自宅」のように相互に遠隔であってもリモート会議が成立する。ただし、すべての人にその条件があるわけでもなく、能力的にも格差が大きいことに留意すべきである。また、本来の人間的な触れあいや飲食を共にすることによる親密性の向上がいかに大切かをあらためて認識させられた。
 この間の社会的教訓は、「集まる」か「オンライン」かどちらか一方だけが有益なわけではなく、双方のメリットを組み合わせながら活動する重要性が示されたことにある。新型コロナのワクチン接種が進んだとしても、短期間に終息しないと考えられるので、長続きする活動スタイルを確立することが重要だ。

(3)本部事務局機能の強化と財政状況の改善
 本部においては、病気療養中の事務局長の快癒を願いながら、事務局長不在の事態を打開し、新しい事務局体制を確立する必要がある。
 慢性的に収入不足の状態となっている本部財政は、2021年5月の大口募金により、借入金を完済する見通しが立った。ただ、大口の未払金も残っており、長期間の未収金や立替金などの回収が急がれる。さらに、経常的な支出の中から一定の削減効果を得られる改革を進めており、わずかながら改善の途についている。本部内に立ち上げた財政問題を検討するチームの論議を進め、収支バランスについての改善を進めていく。
 夏冬の特別募金については本部執行役員会・全国理事会での論議を経て、各地方組織に呼びかけの手紙を送るなどした結果、20年夏季は京都、東京、広島、埼玉、群馬、石川、高知の7組織などで予算の80%、20年冬季はさらに北海道、大阪、名張を加えた10組織などで予算の66%まで達し、本部財政を維持することができたが、取り組む組織が固定化されてきており、懸念される状況は続いている。

(4)交流集会の開催と本部=地方間の連携
 全国総会の開催されない年にはブロック別交流集会を企画し、実施していく。ブロック別は本州以外の地方組織からの参加に格段の留意を払い、文字通り全国の全組織の叡智と経験を交流できるよう工夫する。
 本部と地方組織の情報交換や意思疎通は十分とは言えない状況にあり、毎月のレターに加え、メーリングリストでの情報発信も始められたが、まだまだ登録者が少なく、発信数も少ないのが現状であり、改善の余地がある。地方組織も地方版の機関紙を発行している組織で本部に送っていない組織は、機関紙を本部に送ってほしい。発行していない組織でも、メールやFAXなどで、活動状況を本部に知らせてほしい。

(5)植民地支配の歴史わい曲を許さない
 2018年秋以来の元徴用工問題に加え、21年1月のソウル中央地裁の判決により再燃した「慰安婦」問題について、「ちゃんと知りたい」という社会的要請に応える必要がある。日本と朝鮮半島についての歴史認識を正確なものにし、国民に広めていくために「連続講座」を企画することを全国に呼びかける。
 10円リーフレット「このままでいいのか日韓関係」の残部の活用を進めるとともに、協会内外の執筆者により、機関紙などで歴史修正主義と闘う論陣を張る。

(6)朝鮮半島問題での幅広い共闘と東アジアの平和確立への取り組み
 2019年の3.1独立運動100周年を機に、日朝協会の呼びかけをきっかけとして、日本と韓国・朝鮮問題で活動する諸組織との大同団結で発足した「3.1朝鮮独立運動100周年キャンペーン」は、100周年記念行事の後も「『3・1朝鮮独立運動』日本ネットワーク」として継続的に活動しており、この課題の「総がかり行動」ともいうべき枠組みを発展させている。
 2019年2月に発足した「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!市民連帯行動実行委員会」は、その枠組みと、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」とのジョイントベンチャーであり、過去の植民地支配と侵略・加害の歴史を直視し、日本社会の排外主義を克服して、朝鮮半島の非核・平和を実現することをめざす市民運動として、活動を継続している。この活動が、2019年7月の参議院選挙でも野党と市民の合意項目に「東アジアにおける平和の創出と非核化の推進のために努力し、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた対話を再開すること」と書き込ませ、その後の市民連合と立憲野党の政策合意のための協議に反映していることは間違いない。この市民連帯行動は韓国の多数の市民組織とも連帯して、コロナ禍以前には日本での各種集会・シンポジウムに、韓国から複数の代表を招くなど、東アジアの平和構築に貢献してきた。協会は上記のネットワークと実行委員会に参加し、その発展のために尽力する。

(7)在日韓国・朝鮮人の諸権利の擁護と韓国・朝鮮の人々との交流
 「日本第一党」が都知事選挙や各地方議員選挙に公認候補を立候補させ、選挙運動の建前で悪質なヘイト宣伝を振りまいており、川崎市では「罰則付き」のヘイトスピーチ禁止条例制定後の新たな局面での闘いが続いている。神奈川県相模原の運動のように罰則付き条例をめざし、巧妙化したヘイトスピーチを許さない活動を全国で強化する必要がある。
 朝鮮学校との交流は全国各地で取り組まれており、補助金・助成金打ち切り反対・復活を求める運動が続けられている。高校無償化や幼保無償化からの排除を許さず、永住外国人の地方参政権付与を実現するため、粘り強く運動を進める。
 国際友好旅行企画は、実際に現地に行って人々と交流し、歴史認識を深める経験として欠かせない。ポスト・コロナの時期を見計らい、韓国への旅行企画・立案に取り組む。また、韓国の進歩連帯との友好交流など国際活動の発展に努める。

総会議案の補足

 全国総会議案について、発表後の情勢の変化などに関して、以下の点を補足します。

第1章 激動する内外情勢
(1)元徴用工・「慰安婦」問題をめぐり「史上最悪」の日韓関係
 2021年6月7日、韓国のソウル中央地裁は、元徴用工らが新日鉄住金(現日本製鉄)、三菱重工業など日本企業16社を相手取って賠償を求めた訴訟で、原告の訴えを却下した。原告側は14日に控訴した。この判決に対して強制動員問題の解決と過去清算のための共同行動が「強制動員被害者らの請求を却下した6.7ソウル地方法院の反動的判決を糾弾する!」声明を発表した。
 2021年7月11日、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動は声明<「慰安婦」問題の解決は「被害者中心アプローチ」から外れてはならない〜2015年日韓合意を前提にした提言「共同論文 慰安婦問題の解決に向けて」をめぐって〜>を発表した。声明は3月24日に日韓関係や戦後補償問題に取り組む研究者や弁護士ら8名が「慰安婦問題の解決に向けて」と題して発表した共同論文への批判となっている。声明では共同論文が解決案の基盤としている2015年の日韓合意は、日本政府にとっては、過ちを繰り返さないために記憶し継承するのではなく、加害の事実をなかったことにするための合意だとしており、日韓合意の延長上に対話を進めようとすることは、日韓合意が暴力的なものであったという自覚が日本の市民にないことを意味し、共同論文の呼びかけ人に再考を求めている。
(2)朝米・南北関係首脳会談を経て
 2021年4月、バイデン米政権が対朝鮮政策の見直しを終えたことをホワイトハウスが明らかにした。サキ米大統領報道官は「我々の目標は朝鮮半島の完全な非核化である」と強調しつつ、オバマ政権の「戦略的忍耐」、トランプ前政権の「一括取引」のどちらでもない「第3の道」を選んだ。5月には米政府高官がトランプ前大統領と金正恩総書記が2018年に「朝鮮半島の完全な非核化」で合意したシンガポール共同声明を前提とすることを明らかにした。
 5月21日には文在寅大統領とバイデン大統領が首脳会談を行い、朝鮮半島の完全な非核化の実現に向けて北朝鮮への外交と対話を通じた関与を重視する方針を確認した。会談後、北朝鮮問題に深く関わってきたソン・キム氏を担当特使に起用することが明らかになった。
 6月17日、朝鮮の金正恩総書記は対米関係について、対話と対立の双方の用意をすべきだとし、特に対立に備える必要があるとの見解を示した。これに対し、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「興味深いシグナル」との認識を示した。
 6月21日には日本、韓国、米国の朝鮮担当高官がソウルで政策協議を行いました。3国は朝鮮との対話を早期に再開し、「朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和定着」を目指すことを確認した。米国のキム特別代表は「金総書記が対話に言及したので、近く前向きな反応があることを期待している」と述べたが、朝鮮の金与正副部長は「米国は自身に心地良いように状況を解釈しているかもしれないが、それは多大な失望をもたらすだろう」と突き放した。
(3)日朝国交正常化
 2021年6月4日、衆院経済産業委員会で朝鮮に対する輸出入禁止という日本独自の経済制裁の延長が全会一致で承認された。
(4)安倍−菅内閣の暴政
 2021年7月の東京都議会選挙では自民党は公明党とあわせて過半数の確保に届かず、菅政権にとって「大打撃」となった。立憲民主党と共産党は競合を避けた22選挙区(無投票含む)のうち13選挙区で当選を果たした。特に立憲の公認・推薦候補は8勝2敗と「共闘」効果が顕著で、次期衆院選に向けた選挙区調整を急ぐよう求める声が高まっている。
(6)憲法9条を守る運動
 2021年6月11日に国民投票法改正案は参議院本会議で可決成立し、国会を通過した。

第3章 今後2年間の重点課題
(3)本部事務局機能の強化と財政状況の改善
 2021年6月7日、俵事務局長は肺がんのため逝去された。

討論のまとめ

 全国総会は初めてオンライン形式で開催されました。東京の中継キー会場とZoomミーティングで合計54人が参加しました。この人数は前回の参加者数に匹敵します。内訳は本部6名、北海道2名、宮城3名、群馬2名、埼玉8名、東京7名、神奈川5名、愛知1名、名張2名、京都6名、大阪6名、広島6名です。埼玉、京都、大阪、広島でサテライト会場を設置・運営できたことは特筆に値します。
 討論では本部を含む10組織の16名が発言しました。テーマとしては@組織活動に関わるもの、A民族差別に関わるもの、B歴史認識に関わるものがありました。
 @では定例の役員会にミニ学習会を入れて好評という埼玉や、コリア問題講座を連続開催している大阪など、「例会方式」の実践の有効性が語られました。また、大阪や京都からは若い世代へのアプローチについて発言がありました。北海道や大阪からはフィールドワークの重要性について言及されました。一方で、コロナ禍で集会が開けない、事務局会議を持てないといった苦労が群馬や宮城から報告されました。また、埼玉や名張などから電子メディアの活用を強化することの提言がありました。
 Aの課題では在日コリアンへのヘイトスピーチが繰り返されている川崎と関東大震災での朝鮮人虐殺犠牲者慰霊に関わって差別集団や行政と闘っている東京からの報告があったほか、京都と本部からは「表現の不自由展」開催をめぐる情勢についての発言が、広島からは朝鮮幼稚園に無償化の適用を求める運動の報告がありました。
 Bのテーマでは歴史修正主義の教科書への持ち込みについて本部から、中国人被害者とは和解し、朝鮮人被害者とは和解しない企業のダブルスタンダードについての批判が東京から、日本軍「慰安婦」問題の学習会について広島からの発言がありました。
 このほか、各地でコロナ禍での活動についてこもごも語られました。活動上の困難についても率直な発言がありましたが、総じて議案に賛成の立場から、積極的で意欲的な意見表明が多かったと思います。コロナ禍はまだまだ続きますが、アンダーコロナの状況でも、ポストコロナの時代に向けても協会組織を大きくすることを訴えて討論のまとめとします。

全国総会宣言

日朝協会第47回全国総会宣言

 日朝協会は、2021年7月24日(土)に史上初のオンライン方式で、第47回全国総会を開催しました。総会には以下のスローガンを掲げました。
*よく学んで正しく認識し、排外主義・民族ヘイトに打ち勝とう!
*コロナ禍でも工夫して運動を進めよう!
*組織を大きく発展させ、世論を動かす日朝協会を!

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大して収束せず、日朝協会は6月に予定していた京都市内での定期全国総会を延期し、リモート開催とせざるを得なくなりました。政府の感染症対応は当初から、「アベノマスク」の全戸配布や全国一斉休校、感染が収まった段階で実施するとされていたGoToキャンペーンの早期開始など、非科学的で、無責任な対応に終始してきました。また、「切り札」と強調するワクチン接種はいまだに先進国最低レベルで、その調達すらおぼつかない状況の中、東京オリンピック・パラリンピック開催ありきで突き進んできました。
 朝鮮半島をめぐっては、「史上最悪」とも言われる日韓関係が継続し、日本軍「慰安婦」問題や徴用工問題では解決に向けた進展が見られません。朝米首脳会談後の関係改善の停滞や米韓合同軍事演習などにより、朝鮮側も軍事的対応を取るなど、朝鮮半島の平和構築は進んでいません。
 日朝協会は、18年11月からはじめた「日朝国交正常化署名」の取り組みを強化し、国交正常化のための日朝会談を実現することを求めます。さらに私たちは、3・1独立運動百周年記念の取り組みではじまった日韓の市民組織との親善を発展させながら、在日コリアンとの交流を進めることを確認しました。
 日本軍「慰安婦」・徴用工問題、関東大震災時朝鮮人虐殺などで、日本政府や日本人の歴史認識が問われています。日本人の侵略・加害、植民地支配の自覚と責任が希薄であるため、政府の韓国・朝鮮への攻撃を許し、ヘイトスピーチの温床にもなっています。こうしたことを克服するためにも、近現代史についての学習会を各地で開催することを確認しました。
 こうした課題を達成するために、日朝協会の活動と組織をさらに強化・発展させること、そのためには、女性役員・会員や青年会員を意識的に増やすこと、財政問題を全体で解決していくことが確認されました。さらに、機関紙『日本と朝鮮』やホームページをいっそう充実させ、フェイスブックなどのSNSの活用を一層活発にすることが提起されました。総会での発言では、コロナ禍で活動を継続する上での工夫がたくさん聞かれました。その教訓をそれぞれの日常活動にいかし、市民から信頼されるために、みんなで次期総会にむけて奮闘することを誓い合いました。

2021年7月24日
日朝協会第47回総会







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