以下の議案、討論のまとめ、総会宣言、特別決議はそれぞれ、6月17〜18日の定期全国総会で採択されました。 |
第48回全国定期総会議案 (4月の全国理事会で決定)第1章 朝鮮半島ならびに国内外の情勢(1)安保3文書と大軍拡 ロシアによるウクライナ侵略から1年が経過したが、アメリカやNATO諸国によるウクライナへのいっそうの武器援助が進められ、戦争はいっそう長期化する様相を見せている。国連総会は、戦争から1年を迎え、国連憲章の原則に沿ってロシア軍のウクライナからの完全撤退、和平のための外交努力への支援の強化、などの決議を加盟国の7割超の141カ国の賛成で可決している。 岸田政権は2022年12月、「戦後のわが国の安全保障政策を実践面から大きく転換」するとした「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保3文書を、国会にはかることなく閣議決定した。ロシアのウクライナ侵略を受け、同様の事態が東アジアで発生する可能性もある、と根拠のない「脅威」を煽り、大軍拡計画への国民の支持を取り付けようとしている。この文書の背景には、強大な軍事力と経済力を基盤とするアメリカの覇権が中国に脅かされるとの危機意識からのアメリカの戦略転換がある。中国を「専制主義国」と敵視し、「民主主義国家」が結束して軍事包囲網を構築し、抑え込むというのが現在のアメリカの戦略で、この外交上のフレーズが「自由で開かれたインド太平洋」である。 安保3文書では、中国は日本の平和と安全、国際社会の秩序への「これまでにない最大の戦略的な挑戦」だとしている。また、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は「脅威」、ロシアは「懸念」だとして敵視し、日米同盟と同盟国との連携によって、これらの国家を軍事的に抑え込むとしている。具体的な政策は軍事一辺倒で、長射程で迎撃困難なミサイルの配備による敵基地攻撃能力〔反撃能力と表現〕の保有などの「スタンド・オフ防衛能力」の整備が中心になっている。しかも自衛隊は米軍との協力をよりいっそう深化させ、両軍が「融合」して敵基地攻撃能力を行使するとしている。 「相手の領域において…反撃を加える」とする敵基地攻撃は、これまで政府が示してきた「相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国の国土」を防衛する(1972年田中首相答弁)とした専守防衛を根本的に転換するもので、憲法9条に反することは明らかである。 さらに、安保3文書の実施のために、今後5年間で43兆円もの軍備拡大が必要だとし、これが増税と国民生活の圧迫につながることは必至である。また、対中国を想定して沖縄をはじめ南西諸島に次々と自衛隊ミサイル部隊が配置され、米軍と基地の共用化も準備されていて、沖縄では「沖縄を再び戦場にするな」との声が高まっている。 NGO関係者や研究者らでつくる「平和構想提言会議」は、安保3文書のような軍事力では平和はつくれない、東アジアで敵をつくらず、中国も組み込む形でアセアンなどの枠組みを活用して平和的な共生圏をつくろうと提起している。協会も学ぶべき平和構想だろう。 (2)関東大震災から100年 2017年から小池百合子都知事は、それまで歴代都知事が関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式典に送ってきた追悼の辞の送付を拒否している。2023年2月21日に都議会でこの件を質された小池知事は、「何が明白な事実かは歴史家がひもとくもの」と答弁し、朝鮮人虐殺の事実を認めないという認識を示した。こうした知事の姿勢から、昨年10月東京都人権部は、朝鮮人虐殺を事実と発言した動画が含まれた映像作品の上映を禁止するという措置までとっている。 (3)北朝鮮の弾道ミサイル発射と米・韓・日の対応 日朝両国首脳が日朝平壌宣言に署名してから20年が経過した2022年9月、北朝鮮外務省の宋日昊(ソン・イルホ)氏は、日本が「宣言を白紙状態にした」と非難しつつも、朝日関係の今後は「日本政府の態度次第」だとして、日本側の姿勢によっては関係改善も望めるとの余地を残した談話を発表した。 北朝鮮は2022年の1年間に70発近いミサイルを発射したことで、「岸田軍拡」の口実とされているばかりか、日本国民の多数、いわゆる民主団体・平和団体からも抗議の声は止まない。一連の弾道ミサイルの連射は国連決議違反であり、許されないが、「休戦」状態にある北朝鮮が対戦相手の米国の軍事的脅威に日夜さらされているという背景を理解すべきだ。北朝鮮は23年2月18日に大陸間弾道ミサイル(約66分間飛行)を発射したが、これは米韓両国が3月に予定していた大規模な合同軍事演習に対抗し、けん制するものだったとされている。翌19日には、韓国の戦闘機が米戦略爆撃機を護衛する形で連合空中訓練を実施し、航空自衛隊も安保3文書が示す「抑止措置」の一つとして、米空軍と共同訓練を実施している。翌日の20日に北朝鮮は短距離弾2発を発射し、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は、アメリカの出方次第で日本列島を越えてミサイルを発射し「太平洋を我々の射撃場」にする頻度が高まるとの談話を発表した。このように、北朝鮮と米・韓・日の間で、軍事対軍事の対応をしても、緊張が高まるばかりで、何の解決も見いだせないことは明らかである。 (4)徴用工「解決策」と日韓関係 2022年5月に韓国で保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が大統領に就任すると、元徴用工問題について、韓国側に対日妥協の姿勢が見えはじめ、日本政府は「完全かつ最終的に解決済み」との立場を崩していない中、23年3月7日、尹錫悦政権は徴用工問題の「解決策」を発表した。その内容の中心は、韓国政府傘下の財団が2018年に大法院が日本企業に命じた賠償金を肩代わりして原告に支払うというものであった。これを受けて、岸田首相は「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるし、今後も引き継いでいく」と述べた。 元徴用工の原告が求めているのは、多くの朝鮮人の命さえ奪った暴力と虐待の下での強制労働、この植民地支配と結びついた重大な人権侵害に対する被告企業と日本政府の謝罪と賠償である。ところが被告企業は一切謝罪をせず、賠償金も支払わず、日本政府は1965年の日韓請求権協定ですべて「解決済み」という姿勢を終始取り続けた。その結果、大法院の確定判決に基づく被害者の名誉と尊厳の回復は、日韓両政府によって捻じ曲げられることになった。 日本政府は歴代内閣の歴史認識は今後も引き継ぐとしつつも、今回の「解決策」とは明確に矛盾する1998年の日韓パートナーシップ宣言の核心部分=「植民地支配により多大な損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対し、痛切な反省と心からのお詫び」を表明するとした部分は明言しなかった。尹大統領もこの「宣言」を日韓で再確認したいと昨年の当選直後から述べていたが、事実上それを実現させなかった。 日本の大手マスコミは「日韓の協調こそ時代の要請」(「朝日」)、「日韓関係立て直す起点に」(「毎日」)など、今回の「解決策」が日韓関係改善に繋がるとして歓迎する論調である。一方、韓国の世論調査では「被害者の意見反映が不十分で同意しない」との回答が6割近くにのぼっている。非常に多くの市民団体や労働組合が尹政権の「解決策」を批判する運動を始めている。 23年3月には尹大統領が来日して日韓首脳会談が行われ、両国間の経済・安保関係は「正常化」に向かい始めたが、協会は「解決策」の問題点を多くの日本の市民に広めるとともに、日本軍「慰安婦」問題も含め、問題の真の解決と日韓関係の改善に向けた取り組みを強めなければならない。 第2章 第47回全国総会(21年7月)以降の活動経過と教訓 (1)組織強化・会員拡大への取り組み 前大会からの2年間に静岡(準備会)、山口の2支部が活動を停止するのやむなきに至った。いずれも地域での活動自体が空洞化していたもので、本部としても存続に手を尽くしたが、組織の中心となる人物が高齢化や病気により実務を担えなくなった際に、どのように組織を存続させるのか、比較的規模の小さい支部では大きな課題に直面している。 また、会員数でも2桁の減少となっていることは協会の存否に関わる重大局面との認識に立ち、すべての都道府県連・支部の役員・会員が常日ごろから組織拡大に注力することが求められる。 そうした中、北海道の「義理と人情大作戦」、石川、神奈川、埼玉、高知などの地道な新会員獲得の経験から、組織のすべての取り組みのあらゆる機会に入会を訴える姿勢に学ぶべき点がある。女性と若者の会員・役員を意識的に増やす課題では、大阪や京都、北海道、神奈川、川崎などで一定の前進が見られる。 組織拡大の基礎となる魅力ある支部(都府県連)づくりの課題では、石川と北海道での朝鮮語(韓国語)講座の開講(再開)が全国的に注目される。大阪をはじめ北海道、群馬、埼玉、京都などでフィールドワークの企画が好評で、新会員の獲得に結びついた例もある。群馬、埼玉、東京、京都などでは新春のつどいを実施して学習と懇親を深め、埼玉や広島では教育委員会への要請・申し入れなども行われ、協会の存在感を示した。 (2)本部の役割と機関紙の充実 2021年6月に予定していた京都での全国総会は新型コロナ感染症第4波の影響で中止・延期され、7月24日に史上初めてオンライン開催された。東京のキー会場のほか、宮城、埼玉、京都、大阪、広島の5サテライト会場も設営され、総計54名が参加して成功した。 総会の開催されない年に実施されてきた交流集会は、近年のブロック別の開催を改め、全国交流集会として2022年6月11〜12日に京都で開催された。およそ4年ぶりに集った全国の会員が「久々の再会に笑顔はじける」(「日本と朝鮮」見出し)機会となった。集会ではコロナ禍での工夫をこらした活動の経験を交流しあい、困難な状況でもフィールドワークなどの企画を実施して組織拡大につなげた例や、面会して集金することで退会を防ぐという実践も語られた。SNSの活用についても多くの経験や希望が交換された。集会後のフィールドワークで宇治市のウトロを訪ね、地区に居住する在日コリアンの歴史を通して多文化共生を訴える平和祈念館を見学。在日コリアンに対する憎悪と偏見に起因するヘイトクライムの放火現場を目の当たりにした。 協会規約により2年間に4回以上の開催を規定されている全国理事会は21年10月、22年4月と10月、23年4月に開催された。オンライン会議の定着により、会場も大きめのモニターが設置されるなどハード面も改善し、運営側も議長団や事務局などで任務分担するなどオンラインも取り入れたハイブリッド運営に熟達してきた。会議では活動方針についての諸決定を行うとともに、情勢討議や全国各地の経験交流も行われた。 本部執行役員会は2021年8月から毎月欠かさずに開催された。この間、現職の執行役員である本田國雄さんが逝去されたほか、複数の執行役員が新型コロナに感染したり、入院手術したりする危機を乗り越えて、情勢の検討と月々の課題の推進を継続してきた。 本部で所持するPCカメラと広領域スピーカー&マイクを活用し、Zoomの有料登録も活かして執行役員会や全国理事会でリモート対応を実現する一方で、対面での会議を重視してきた。 本部の国際活動では、韓国進歩連帯の幹部などと来日の機会などに面会しているが、協会役員の訪韓が困難な状況が続いたこともあり、進展は見られない。本部や地方組織の訪韓ツアーも実施できていない。 機関紙「日本と朝鮮」は22年9月号から印刷所を変更して仕様に若干の変更を余儀なくされたが、体裁を変えずに一貫性を維持した。22年12月の安保3文書改定以降は軍拡批判の論考を連発して、全国の運動を励ましてきた。 (3)財政状況の改善 慢性的に収入不足の状態となっている本部財政は、経常的な支出の中から機関紙印刷に関わる経費を一定程度削減することができた。 夏冬の特別募金については各地方組織が呼びかけに積極的に応じた結果、21年夏季は京都、広島、埼玉、群馬、石川、高知の6組織で予算の70%、21年冬季は京都、埼玉、北海道、広島、石川、群馬、北九州、宮城、高知、新津の10組織で予算の86.4%、22年夏季は京都、埼玉、群馬、石川、大阪、広島の6組織などで予算の57%に、22年冬季は京都、北海道、群馬、広島、北九州、石川、宮城、大阪、高知の9組織と個人で予算の84.5%にまで達し、本部財政が破綻することは免れたが、大きな組織でも募金に応じられていない組織があり、今後の改善が期待されている。 (4)植民地支配責任の歴史認識を広める活動 岸田首相は2022年1月、「佐渡島の金山」を世界文化遺産の候補としてユネスコに推薦すると表明した。佐渡金山では朝鮮人が強制労働させられた事実があり、韓国などから登録への批判の声が上がっていた。協会では22年2月8日に執行役員会声明「今こそ植民地主義を克服しよう!〜佐渡金山の世界遺産推薦にあたって〜」を発して、植民地支配責任の自覚を世論に訴えた。 毎年3月1日前後に行われている3.1朝鮮独立運動記念集会は、本部が推進している「3・1朝鮮独立運動」日本ネットワーク主催による集会と街頭アクションを実施して、植民地支配の歴史を繰り返し学習・普及する機会となっている。23年には埼玉、京都、東京でも記念集会(講演会)を実施し、朝鮮半島に関わる歴史認識を深めている。また、神奈川の相模湖・ダム建設殉難者追悼会や京都の浮島丸殉難追悼集会への参加を呼びかけ、強制連行・強制労働への国民的理解を促進するよう努めた。 「日本と朝鮮」に連載中の宮内秋緒さんの著書「歴史を見つめる─日韓の大切な人たちとともに」の普及活動に取り組んで、一定の成果を収めた。また、各都府県の「平和のための戦争展」などでも協会の役割が発揮された。 (5)アンチ・ヘイトと関東大震災朝鮮人犠牲者追悼の取り組み 関東大震災時の朝鮮人虐殺犠牲者追悼行事は、東京、埼玉、群馬などで、協会が主要な役割を担って取り組まれ、2023年の虐殺100周年を迎えるにあたり、東京や埼玉では韓国メディアや日本国内の新聞社やジャーナリストらからの取材が相次いだ。 「高校無償化」や「幼保無償化」から朝鮮学校・幼稚園を排除する政策に反対する運動は広島、大田(東京)、埼玉などで協会組織が関わった運動が続けられている。 さらに、川崎や相模原(いずれも神奈川)でのアンチ・ヘイトの行動が展開され、協会組織も加勢してヘイトスピーチを無力化する行動に加え、協会としての街頭宣伝行動を2022年中に3回も実施したことは特筆される。また、広島や小平(東京)などでもヘイト禁止条例の制定を求める運動に取り組んだ。 (6)アジアと世界の平和をめざして 2022年3月8日、協会は執行役員会声明「ロシアのウクライナ侵攻に抗議し、即時撤退を求める」を発して、ロシア軍のウクライナからの即時撤退を求めた。 日本平和大会実行委員会に参加して大会の成功に寄与するとともに、原水爆禁止世界大会に、広島の組織を先頭に参加してきた。日本平和委員会全国理事や憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議)参加団体として改憲阻止と反戦平和の隊列に加わって活動している。毎年12月8日には侵略戦争開戦の日・中央宣伝で、宣伝活動の一翼を担っている。 憲法改悪を許さない運動では憲法記念日の新聞広告に協力し、沖縄・辺野古新基地建設を許さない闘いでは、地元紙などへの意見広告に賛同して、国際平和友好団体としての役割を広くアピールした。 第3章 今後2年間の重点課題 (1)新支部結成と会員拡大、女性会員の意識的増員 各地方組織は多様なテーマの学習会や韓国映画上映会、フィールドワークなどの文化的な催しを実施し、会員を増やす努力を継続してきたが、減員を上回る会員増の成果は上がっていない。構成員の自然減は回避できない問題であり、会員増がなければ組織の減勢を免れないことを自覚的に捉え、日常的・恒常的な会員の増加を追求しなくてはならない。 そのため、大阪で実践されている「連続コリア講座」など、従来の「例会方式」で定期的、継続的な集会や行事に取り組むことが重要である。その際、映画・ドラマ、伝統芸能、文学、K-POP、スポーツ、食文化など多彩な切り口で参加者の幅を広げて、新しいつながりを得ることが欠かせない。北海道や石川で朝鮮語学習・ハングル講座を開始(再開)した経験に学んで大いに取り組もう。 一般に女性が多い組織ほど活動が活発な傾向は顕著に現われており、群馬や川崎(神奈川)の実例をめざして、全国で女性会員を増やそう。ホームページやブログ、フェイスブック、ツイッターなどのSNSの活用を強化して、若い世代の会員拡大に向けて取り組む。 また、協会組織のない地域での支部結成のために、石川や大阪が近隣県の組織化の方針を持っていることは重要だ。困難を抱えている地方組織の援助を強化するとともに、本部としても新組織結成を全力で援助したい。 (2)ウィズ・コロナからポスト・コロナへ 新型コロナ感染症は変異株の出現で新たな波を繰り返し起こしており、当面は「インフルエンザ並み」と侮ることはできないが、国民意識はポスト・コロナへと変化してきており、従来のような学習会や講演会、大小の集会やフィールドワーク、朝鮮学校との交流など、協会が熟達している活動も復活してきている。 Zoomやgoogle meetingの活用で、オンラインでの意思疎通が可能となり、従来は参加できなかった遠方からの参加が実現し、家事や介護などの時間制限がある人にも参加しやすくなった。一方で対面でこそ得られる人間的な触れあいや飲食を共にすることによる親密性の形成は無視できない。双方の利点を活かしたハイブリッド方式など工夫をこらして活動を前進させよう。 (3)本部財政の改善 本部内に立ち上げた財政問題を検討するチームの論議を進め、収支バランスについての検討を引き続き進め、全国理事会や執行役員会出席者への交通費の援助制度を復活させることをめざす。 夏冬の特別募金については、募金に応じられていない比較的大きな組織を中心に、組織内での位置づけを明確にして取り組むよう要請を強める。 (4)交流集会の開催と本部・地方間の連携 全国総会の開催されない年には交流集会を企画・実施するが、全国統一とするか、ブロック別とするかは今後の論議が必要だ。全国の全組織の叡智と経験を交流できるよう工夫したい。 本部と地方組織の情報交換や意思疎通は改善しつつあるが、まだ十分とは言えない状況にあり、毎月のレターに加え、メーリングリストでの情報発信も重ねられている。地方組織でも大阪や神奈川のツイッターや高知のフェイスブックなどは世代と空間を超えて活動の領域を広めている。多くの地方組織が地方版の機関紙を発行しており、会員とのつながりを強めるツールとして力を発揮している。さらに多くの地方組織が発行に取り組むことを推奨する。 財政が改善されれば、本部から地方組織へ役員を派遣することができ、空白県の組織づくりや地方組織の強化のための相談、講演会の講師派遣などの展望も開けてくる。 (5)植民地支配の歴史わい曲を許さず、東アジアの平和を確立する取り組み 2019年の3.1独立運動100周年を機に、日朝協会の呼びかけをきっかけとして、日本と韓国・朝鮮問題で活動する諸組織との大同団結で発足した「3.1朝鮮独立運動100周年キャンペーン」は「『3・1朝鮮独立運動』日本ネットワーク」として継続的に活動している。同ネットワークと、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」との共同で立ち上げた「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!市民連帯行動実行委員会」の活動を重視し、協会本部は同ネットワークと同実行委員会の発展のために尽力する。 日本軍「慰安婦」問題、元徴用工問題での、日本の植民地支配責任を免罪し、被害者を切り捨てる「解決」を許さず、過去の植民地支配に向き合う歴史認識を広げることをめざし、協会内外の運動と連携しながら、学習会や機関紙などで歴史わい曲を許さない運動を進める。 関東大震災朝鮮人虐殺100周年を記念する各地の運動に連帯し、8月31日の大集会や「関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」の6月10日学習会など各種行事の成功に尽力する。9月上旬には、東京、埼玉、千葉、神奈川、群馬では100年を機にあらためて犠牲者を追悼し、再びこうした事件を起こさせないことを誓う式典が協会を含め多くの市民団体によって行われる。全国の地方組織は積極的にこれらの取り組みの成功のために尽力することが求められる。 (6)在日コリアンの諸権利の擁護と韓国・朝鮮の人々との交流 北朝鮮のミサイル連射で、各地で在日コリアンに対するヘイトクライムとヘイトスピーチが続発している。 あらゆる差別を許さず、在日コリアンの生活と権利を守る運動に引き続き、協会組織を挙げて取り組む。罰則付きのヘイト禁止条例を全国に普及するために力を尽くす。 朝鮮学校との交流は全国各地で取り組まれており、補助金・助成金打ち切り反対・復活を求める運動を支援する。高校無償化や幼保無償化からの排除を許さず、永住外国人の地方参政権付与を実現するため、粘り強く運動を進める。 国際友好旅行企画は、実際に現地に行って人々と交流し、歴史認識を深める経験として欠かせない。時期を見計らって、韓国への旅行企画・立案に取り組む。また、韓国進歩連帯ほかとの友好交流など国際活動の発展に努める。佐渡金山の世界遺産登録問題や福島第一原発の汚染水処理問題などでの韓国からの調査を注視し、それらの問題で韓国の市民運動との協力を進めたい。国際交流のツールとしての朝鮮語・ハングルを習得する気風を協会内に広めよう。 日朝協会 第48回全国総会宣言日朝協会は2023年6月17日(土)・18日(日)の2日間、群馬県前橋市で第48回全国総会を開催しました。総会には以下のスローガンを掲げました。
こうした情勢のもとで、日本政府は「北朝鮮の脅威」をあおり、意味のないJアラートを発して国民に「脅威」を実感させることに意を注いでいます。対米従属とその下での対中国包囲網をすすめる岸田政権は、「安保三文書」を国会に一切はかることなく閣議決定しました。専守防衛を投げ捨て、沖縄への長射程のミサイル配備など憲法違反の敵基地攻撃に血道を上げ、世界第3位の軍事大国化をめざしています。 日朝協会は、岸田大軍拡を許さず、朝鮮戦争休戦から70年目にあたる今年、あらためて日朝平壌宣言に基づく日朝国交回復、核兵器のない朝鮮半島、戦争のない東アジア、核兵器禁止条約の批准をめざして奮闘することを誓い合いました。 今年100年を迎える関東大震災時の朝鮮人虐殺や「徴用工」・日本軍「慰安婦」問題など、日本政府や日本人の歴史認識が問われています。日本の侵略・加害、植民地支配について、政府に責任を認めさせ、歴史歪曲を許さない国民世論を多数にすることをめざします。そのため、各地の平和のための戦争展などで、日本と朝鮮半島をめぐる近現代史を多くの市民とともに学び、宣伝を強めることを確認しました。 以上のような課題を達成するために、日朝協会の活動と組織を強化・発展させること、とりわけ、若い世代や女性の会員を積極的に増やすこと、財政問題を全体で解決していくことが確認されました。さらに、機関紙『日本と朝鮮』やホームページを充実し、フェイスブックなどのSNSの活用をいっそうすすめることが提起されました。 総会では、これからの活動の教訓となる多くの発言がありました。それらを日常活動に活かして、市民から信頼され、より多くの人々と一緒に日・朝・韓及び在日コリアンとの交流と友好親善をすすめるために、総会決定を会員に届け、みんなで話し合い、次期総会にむかって活動の質をアップグレードしましょう。 2023年6月18日 日朝協会第48回総会 特別決議関東大震災朝鮮人虐殺100年にあたり、政府に植民地支配責任を認めさせ、韓国・朝鮮蔑視を日本から一掃しよう2023年6月18日 日朝協会 第48回 定期全国総会 今年は1923年の関東大震災から100年にあたる。震災時の流言蜚語と官憲・軍隊によるデマ情報を契機に数千人ともいわれる朝鮮人や中国人、労働運動家らが虐殺された大事件を、日本政府は未だに公式に認めようとしていない。100年を経て、虐殺をなかったことにしたり、被害は小さかったと矮小化したり、流言蜚語を「事実」だとして、正当防衛を主張したり、大地震という自然災害よる死亡と同一視したりするさまざまな歴史歪曲が公然化している。 言うまでもなく、朝鮮人・中国人虐殺は、「歴史家がひもといてきた」まぎれもない史実であり、否定できない。政府は虐殺の実態を調査し、事件の真相を明らかにする責任がある。また、多くの人々がその事実と原因を学び、二度と再び同じ過ちを繰り返さないために、学校や地域で事件を学び、伝えていくことを保障し援助することは政府の責務である。 事件当時の日本政府の内務・警察官僚には、植民地朝鮮での執務経験者が多数おり、また各地の朝鮮人虐殺に関わった自警団員は朝鮮半島やシベリアで「不逞鮮人討伐」の経験を有する在郷軍人が深く関与していたことも明らかになっている。日本による朝鮮植民地支配と、それに抵抗する人々を弾圧してきた経験が、虐殺を「功績」として認識し、「朝鮮人は殺しても構わない」という国民意識を形成してきたことは疑いない。 そうした朝鮮人蔑視の悪しき「伝統」が、為政者を先頭に継承され、国民の中に大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国、在日コリアンへの憎悪感情が醸成される温床となっている。欧米では2001年のダーバン会議やBLM(黒人の命は大事だ)運動などを契機に100年あるいはそれ以前の植民地支配に関して、反省と謝罪を表明せざるをえない時代を迎えている。虐殺された朝鮮人犠牲者の名誉と尊厳を回復するためにも、朝鮮半島由来の人々への一切の差別を許さず、ヘイト犯罪・ヘイトスピーチを撲滅するために、日朝協会はあらゆる努力を尽くすことをここに表明する。 私たちは全国総会の総意として、以下の諸点を強く求める。 記 一、政府は朝鮮人虐殺の事実を調査して公表し、被害者への謝罪と追悼・賠償を行うこと。 一、東京都は朝鮮人虐殺の事実を認め、追悼式典への都知事のメッセージを復活すること。 一、政府は戦時期の朝鮮人強制動員(徴用工)の事実を認めて謝罪し、賠償を行うこと。 一、国と全国の地方自治体はヘイトスピーチを禁止する条例を制定すること。 一、日朝平壌宣言を尊重し、日本と朝鮮民主主義人民共和国との国交を正常化すること。 全国総会討論のまとめ好天に恵まれて暑さきびしい前橋で、2日間にわたって合計71名が参加し、1日目の全体討論では7名が発言、2日目の分散会では48名が発言した。発言には以下のような提起があった。
■第1章(1)安保3文書と大軍拡 〈第7段落を新設して以下を挿入〉 また、2023年5月のG7広島サミットでは核抑止体制を正当化し、核兵器禁止条約に言及しない「広島ビジョン」を発表したが、マスメディアは肯定的な評価を振りまいており、国民的批判が不足している。日本が核兵器禁止条約に参加する運動の必要性が高まっている。 ■第1章(2)関東大震災から100年 〈第2段落を新設して以下を挿入〉 2023年5月に参議院内閣総務委員会において立憲民主党の杉尾秀哉議員から、6月に参議院法務委員会において社会民主党の福島みずほ議員から、震災時の朝鮮人虐殺の事実調査・事実認定について質問がなされた。政府側は「出来事から学ばなければならないことはたくさんある」という答弁がせいぜいだったが、国会では100年ぶりとなる質疑であり、国民に虐殺の事実が知られていない状況で、有意義な質問だった。「100年で幕」とさせず、今後とも政府が事実と責任を認めるまで追及すべきだ。 ■第3章(5)植民地支配の歴史わい曲を許さず、東アジアの平和を確立する取り組み 〈第4段落を新設して以下を挿入〉 朝鮮戦争休戦70年の今年を契機に、朝鮮戦争終結・東アジアの平和構築をめざす運動をいっそう推進する。戦争への危機をあおる米韓・米韓日の軍事演習に反対し、演習の規模や危険性を広めるよう努める。北朝鮮の核兵器開発・弾道ミサイル発射をやめさせるためにも、「拉致問題」を「解決」するためにも、日本の植民地支配への賠償と謝罪を実行するよう訴える。日朝平壌宣言に基づいて、日朝国交正常化を実現するために全力を尽くす。 |
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