群馬の森の「朝鮮人追悼碑」撤去中止を求める声明にもかかわらず、県は2014年に「設置条件に反する」として設置許可の更新を拒否した。過去に追悼碑の前で行われた集会で「政治的発言」があったという理由だが、背景には右派の執拗な撤去要請があり、歴史歪曲を県が受け入れた形で容認できない。 市民団体「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」は県の決定を違法として提訴したが、県の決定を適法とする判決が最高裁で確定した。その後、市民団体とのじゅうぶんな交渉もせずに「行政代執行」による撤去に踏み切った県の姿勢は乱暴な民主主義の破壊であり、許されない。そのうえ撤去費用約3,000万円の支払いを市民団体に求めているとされることも重大だ。撤去は日本と大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国との国家間の信頼関係を破壊し、国民間の和解と友好を阻害する行為以外のなにものでもない。 日朝協会は日本と朝鮮半島の国や人々との善隣友好を促進する立場から、過去の植民地支配の歴史を正しく学び、継承する活動を進めている団体として、満腔の怒りを込めて群馬県に抗議するとともに、撤去作業をただちに中止することを強く求める。
2024年2月1日
日朝協会 会長 関原正裕 事務局長 今野耕太 |
新年のご挨拶 世界から孤立しつつあるアメリカこのようなイスラエルに肩入れするアメリカの姿勢は、今始まったことではありません。 2001年に南アフリカのダーバンで国連の反人種主義国際会議(約150ヵ国の政府・NGOが参加)が開催され、奴隷貿易・奴隷制は国際法上の「人道に対する罪」であり、植民地主義は「今日の世界各地における社会的経済的不平等を続けさせる要因であることは遺憾」とする宣言が採択されました。この宣言に対してアメリカとイスラエルは反対し、会議を途中退席したのです。 反対の理由は、宣言の中に「外国の占領下にあるパレスチナ人の苦しみを憂慮し、パレスチナ人の自決権と独立国家の建設について奪うことのできない権利を認識する」という一文が入っていたからでした。現在も続いているイスラエルによるパレスチナのガザ地区とヨルダン川西岸地区の占領支配を植民地主義であるとして非難していたのです。 過日、進められたイスラム組織ハマスとイスラエルの間の人質と囚人の交換で、イスラエルのパレスチナ人支配の実態が見えてきました。11月の時点で、イスラエルに収監されている「治安囚」は6,809人、裁判なしの行政拘禁も多数ふくまれています。イスラエルの警察車両に投石したとして2年間収監されていた17歳の少年、イスラエル人入植者を刺したとされ、裁判もなく2年間投獄された16歳の少女もいました。イスラエルのパレスチナ人支配は、ダーバン宣言にあるように「憂慮」すべきものであり、反人道的で過酷な植民地支配と言ってよいでしょう。 このダーバン宣言をきっかけに、欧米諸国による過去の奴隷貿易・奴隷制の歴史を告発し、帝国主義国による植民地支配の歴史を問い直す時代になっています。アメリカ国内のBLM(黒人の命は大事だ)運動は、全米人口の1/4にすぎない黒人・ヒスパニックが全米囚人の59%を占めるといった構造的な差別の現実を告発しています。 また、植民地支配のもとで被害を受けた人権を救済するという立場にたって、植民地支配そのものの不法性・不当性を追及するという世界的な潮流が生まれています。2018年の韓国大法院の元「徴用工」判決、つい先日11月23日のソウル高裁の日本軍「慰安婦」判決など、韓国司法は、日本の植民地支配のもとでの被害を、人間としての尊厳を踏みにじった反人道的な人権侵害であるとして、加害者は謝罪と賠償を行ない、被害者の名誉と尊厳を回復しなければならないとしています。こうした司法判断の背景にあるのは、ダーバン宣言とそれを後押しする世界の潮流です。 このような潮流に背を向けているのがイスラエルに肩入れするアメリカであり、そのアメリカの姿勢は安保理決議に見られるように確実に世界から孤立しつつあるのです。
2024年1月1日
日朝協会会長 関原正裕 |